何もないから感じられる豊かさ

下呂ふるさとワーキングホリデー生:竹内 麻衣子さん(社会人)
受入れ事業者:ソラノイエ 農村滞在型の宿 滞在先:ソラノイエ 農村滞在型の宿

■今回、下呂ふるさとワーキングホリデーに参加したきっかけを教えてください。

 知人から「ソラノイエ」教えてもらったことが最初のきっかけでした。ずっと大阪の街中で暮らしてきましたが、自然豊かな場所でできるだけ自給自足しながら生活したいと思うようになり、移住を考えていたところ、「ソラノイエ」に滞在したことのある知人から、ぜひ行ってみてほしい、と勧められ、滞在してみたいと思うようになりました。それまで「ふるさとワーキングホリデー」という制度を知りませんでしたが、教えてもらい、とてもいい制度だと思い、参加することにしました。

■期間中は、どんなお仕事をしましたか?

宿泊客を受け入れる準備として、掃除やベッドメイクをしました。宿泊客の滞在期間中は、食事の準備を手伝い、設備などの案内をすることもありました。チェックアウトの日には部屋の片づけをしました。畑では、カブ、大根、ニンジン、ビーツ、レタスの種蒔きをしました。みな無事に芽が出てくれて、本場が出たら間引きもしました。また、夏野菜がまだ盛んに実っていたので、毎日の様にナスやピーマン、万願寺とうがらしの収穫をしました。

■滞在中の暮らしは、どうでしたか?

 ソラノイエがある上原はとても静かで穏やかな場所で、聞こえてくるのは水の音、虫の声、風の音。ただそこにいるだけで、気持ちがすーっとする感覚がありました。草木や虫たちは日々少しずつ、時には大きく変化していて、これは大阪にいるときにはない気付きでした。また、この感覚は、2~3日の旅行では感じられなかったと思います。畑作業は、時に重労働でしたが、身体を動かした後の疲れは心地よく、収穫した野菜をいただく喜びもありました。

■地域の方々とはどんな交流がありましたか?

 ソラノイエの中桐さんには、田舎暮らしのこと、移住のこと、米づくり、野菜づくりのこと、いろんなことを教えてもらいました。畑で作業をしていると、地域の方が声をかけてくれました。顔を覚えてもらい、また声をかけてもらうのも、数日の滞在では味わえなかっただろう喜びでした。また、中桐さんを通じて、下呂の別の地域に住む方々とも知り合う機会がありました。中桐さんをはじめここで出会った方には、地域づくりを懸命に考えている方がたくさんいて、助け合いながら、アイディアを出し合いながら、協力して生活されている姿が印象的でした。また、地域の方だけでなく、宿泊されるお客さんや、お手伝いに来られた方との出会いも、ソラノイエ滞在の醍醐味だと感じました。

■今回の滞在を一言で表すと?

 「豊かさ」です。ここには物はあふれてないけれど、何もないから感じられる豊かさ、自分で作り出す豊かさがありました。

■今回の滞在で得た学びやこれからの人生で生かしていきたいこと

 田舎暮らし、自給自足の暮らしを実際に体験してみて、天候に左右されたり、虫や動物に田畑を食べられたり、自然との共生の大変さも感じましたが、それでも、「自分でもできるかもしれない」という感覚を持てたのは大きな学びでした。大阪では、「買うのが当たり前」の生活をしていました。食料はスーパーに行けばなんでも揃ってるし、家の修理は迷うことなく業者に頼み、服は飽きたら買い換える。だから、自分の手で作るということへのハードルがすごく高かったです。でもここでは、「作るのが当たり前」。作業は大変だったり面倒だったりすることもあるけれど、決してできないことではなく、むしろその作業が心地よいこともあり、米や野菜が実った時の喜びはひとしおで、こっちの「当たり前」の方が、よっぽど人間らしくて好きだなぁと、感じました。ここで学んだこと、感じたことをいかして、そんなに遠くない将来、どこかで自分の暮らしを始められたらいいなぁと思います。